避難者通信41号 *2017年11月9日
みなさん、お元気でいらっしゃいますか? 沖縄の気温もようやく下がり始めたようです。 今年の夏はとりわけ長かったように思います。 とっくりきわたの花が咲き始めるなど、沖縄の秋が感じられます。 気候の変わり目、くれぐれもご自愛ください。
生業訴訟の判決が10月10日にありました。その翌日に高江で米軍ヘリが炎上し、 その処置をめぐって、日本に主権がなく、日本国土が米軍に占拠されたことが県民の目の前で展開しました。 放射能汚染の恐れもあり、高江に測定に行くなどの対応をしていましたために、 生業訴訟判決について論評することが遅れてしまいました。 原告団の皆様、支援の皆様、大変お疲れ様でした。 基本的な勝訴おめでとうございます。 自己の課題をみんなの課題として力を合わせられている実践に敬意を表します。 判決後の原告団・弁護団の声明の骨子をご紹介します。
声明全文はファイルとして添付しました。 ************ *「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団、弁護団 声明* *1* *国の法的責任と東京電力の過失* 判決は、国の法的責任と東京電力の過失を認め、断罪した。 予見義務、予見可能性、回避義務、回避可能性、をいずれも認めた。 また、必要な津波対策をとらなかった東京電力についても過失があったと認めた。 *2* *被害救済の範囲と水準* 判決は、平穏生活権侵害による慰謝料について、本件原告3824名のうち、約2907名の請求を認め、 原賠審の中間指針等に基づく賠償対象地域よりも広い地域について賠償の対象とし、 かつ既払の賠償金に対する上積みを認めた。 避難者原告のうち帰還が困難となった原告らが求めていた「ふるさと喪失慰謝料」については、 実質的にこれを認めなかった。 原告らが居住していた全ての地域について救済対象とする判断ではなく、 また上積みの額についても原告らが求めていた水準に達していない地域もあり、その点は極めて不十分である。 *3 原状回復請求について* 原告らが求めた原状回復請求については、判決は「本件事故前の状態に戻してほしいとの 原告らの切実な思いに基づく請求であって、心情的には理解できる」と理解を示しつつ、 「求める作為の内容が特定されていないものであって、不適法である」として、これを棄却した。 *4* *訴訟団の原点とたたかい* 私たち生業訴訟団は、次の要求の実現を求めている。 ①二度と原発事故の惨禍を繰り返すことのないよう、事故惹起についての責任を自ら認め謝罪すること。 ②中間指針等が最低限の賠償を認めたものにすぎないという原点に立ち、中間指針等に基づく賠償を見直し、 強制避難、区域外(自主的)避難、滞在者など③全ての被害者に対して、被害の実態に応じた十分な賠償を行うこと。 被害者の生活・生業の再建、地域環境の回復及び健康被害の発生を防ぐ施策のすみやかな具体化と実施をすること。 ④金銭による損害賠償では回復することができない被害をもたらす原発の稼働の停止と廃炉。 **************** 現状で、福島県内だけで小児甲状腺がんが191名の方に発見されました。 老衰による死亡、アルツハイマーによる死亡、精神および神経疾患による死亡、胎児・乳児の周産期死亡、 などが2011年の福島原発事故以来急増していることが厚労省人口動態調査などにより認められます。 すでに放射線弱者の方の命が失われることが進行し、元気な方にはこれから危機が押し寄せます。 チェルノブイリでは5~6年目あたりから諸疾病が増加し始めました。 すでに健康被害は「懸念する」あるいは「恐れる」段階ではなく目の前で被害が広がっている状況です。 *4* *訴訟団の原点とたたかい*③にも記されている「健康被害の発生を防ぐ施策のすみやかな具体化と実施」は非常に重要です。 しかし、このことは国や自治体などに「施策」を求めるだけではなく、 原告を含む日本住民全てが「食事による内部被ばくの防止」を毎日・毎食のたたかいとして実施しなければならないことが最重要です。 原告団は、生きた市民である原告団として、現に進行しつつある被曝、 特に内部被ばく、を日々防止する課題を忘れてはいけません。 「地域を返せ」を合言葉にして、地域に住み続けるみなさんは、 是非日々の内部被ばくを回避する自己防衛を忘れないでほしいと思います。 一番大変な難課題ですが、ぜひ実施課題として認識して欲しいと思います。 それなしに行政の施策を待っていてはいけません。 自己防衛と隣人を守ることを、どうか人権の基本課題として捉えてください。 チェルノブイリでは年間3ミリシーベルト以上の外部被ばく(土壌汚染)の場所は住むことも生産することも禁止されました。 その措置は「住民を被曝から防護する」ための施策です。 日本は20ミリシーベルトの土地に「帰還」し「復興」を求められています。 住民保護の基本観点が日本には抜け落ちていると思いませんか? どうか原告団のみなさん、訴訟は継続すると思いますが、被曝の自己防護に励まれて、 人格権を守るために頑張り抜いてください。 くれぐれもご自愛のうえ、お励みください。