避難者通信43号「311甲状腺がん家族の会」「高江米軍ヘリ炎上」
皆様、時は早く進むもので早や師走となってしまいました。 お元気でいらっしゃいますか? まずお知らせです。 ◆つなごう命の会 第13回 定例ゆんたく学習会 日時 12月16日(土) 17:30~20:00 場所 牧志駅前ほしぞら公民館 第1学習室 内容は こちらをご覧ください。
今回のトピックス:2つ
① 311甲状腺がん家族の会会報(創刊号) 311甲状腺がん家族の会さんから会報(創刊号)と会についてのリーフレットが送られてきました。 会報には巻頭言として松崎道幸医師による「福島小児甲状腺がんー9つの論点をめぐって」、患者保護者の声などが掲載されています。 会のご案内の中の1文をご紹介します。 「福島県の県民健康調査・甲状腺検査では194人(そのうち154人に手術が施行)が小児甲状腺がんないしはその疑いとされ、県民健康調査委員会の度にその数は増えています(本年10月22日時点)。その一方で、スクリーニング効果や過剰診断として、甲状腺検査縮小の動きも顕在化しつつあります。従いまして、唯一の当事者団である当会が果たす役割も、これまで以上に大切になるかと考えます。つきましては、みなさま方のますますのご支援・ご協力を心からお願い申し上げます。」 福島小児甲状腺がんにつきましては、多数の科学的研究調査が行われており、国際環境疫学会会長などから、異常多発に憂慮しているとし、日本政府が原発事故による福島県の人々の健康障害を科学的に評価する方策を日本政府に求める勧告をしております。 しかし、日本政府、福島県は論駁しつくされた理由を繰り返し述べ、住民保護・予防医学的観点からほど遠い姿勢をしています。 3.11以降、老衰、アルツハイマー、心筋梗塞等の急増が厚労省人口動態調査等から明るみに出されていますが、福島小児甲状腺がんは最もあからさまな棄民方策の表れであると思います。 もっとも露わに現れる甲状腺がんを「事故に無関係」とすることにより水面下の膨大な健康被害の加害責任や賠償を不問にしようというのです。 原爆被爆者援護法では「身体に放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」を不当な放射性残虐兵器の被害者として認めています。その精神で福島原発事故でも1ミリシーベルト以上の汚染地の全員に被爆者手帳を交付して予防医学的な住民保護を行うことが当たり前と考えます。 今まで甲状腺がんを患った方が沈黙を守っていることが非常に気になっていました。家族の会は大変重要な役割を果たします。 加害者目線に迎合するような「福島の絆」であってはなりません。被害者が被害者として認められること、加害者が加害者として認められること、率直な真摯な、なんでもいうことが許される社会関係を樹立する必要があります。 そのために家族の会として名乗りを上げることがなんと大切なことでしょう。またなんて勇気のいることでしょう。 一人一人が大切にされる社会を目指すうえで健康被害者の皆さんが勇気をもって支えあうことが大切です。 つなごう命の会は、福島から、あるいは福島以外から原発事故避難をしている人を支援しようと願っています。同時に沖縄県民にも流通を通じての内部被ばくの犠牲者が増加していることが明白になっています。従いまして沖縄県民を内部被曝から守ることも重要課題と考えています。 つなごう命の会は、311甲状腺がん家族の会の皆様が粘り強く人権を求め、力になり支えあう活動を展開されることを願っています。 311甲状腺がん家族の会へカンパなどのご支援を希望される方は、下記のURLをご覧なってください。 311甲状腺がん家族の会(311 Thyroid Cancer Family Group) https://311kazoku.jimdo.com/
② 高江米軍ヘリ炎上事故について 琉球新報に拙論説が論壇に掲載されました。 ストロンチウム90の放射線測定と県民の安全について論じています。 添付ファイルとともにご案内いたします。
<<論壇>> 10月11日、東村高江で米軍ヘリが不時着し炎上した。破損したヘリは2004年に沖国大に墜落炎上したCH53型と同型で、回転翼7本の安全監視システムにストロンチウム90が1850万ベクレル(1秒間に出る放射線数)ずつ装てんされていた。炎上機体の中心部は原形をとどめなかった。 事故から3日後と5日後の二日間、私は特殊な方法で放射能ストロンチウム90の検出を試みた。風下地域で自然放射能の10分の1程度、1平方メートル当たり500ベクレル弱ほどの軽微なストロンチウム汚染が算出された。 勢いよく炎上し煙となったので、炎上機体直下でなければ、近くの土壌にはおそらく汚染は残存しないだろう。米軍の事故処理の後では検出はなお困難だ。 米軍事故で県民に対する加害要因を隠ぺいすることは許されない。加えて、原爆以後の米核戦略として世界的に内部被ばく被害が隠され続けてきた。県民が危険にさらされても「情報を絶てば治まる」というのでは基本的人権に障る。 米軍の軍事行動が継続する中では、危険な事故が再び発生する可能性を排除できない。 日本政府の主権放棄の故に米軍被害から沖縄県民の人権が守られていないのが日常だ。事故時はさらにひどい。沖縄県、県警、消防など日本側の一切の権限が「地位協定」に阻まれる。第一次現場検証権がないことは住民の安全を守れないことを意味する。 このような状況で、県民が被害を最小限に食い止めるのは事故時の賢い対応が大きな意味を持つ。放射能その他の危険物質が熱を加えられて微粒子となる。多くの場合微粒子は不溶性である。不溶性の放射性その他の危険微粒子を吸い込むことに最大の危険がある。 他方、今回の程度の汚染では事故後の危険は極めて小さい。事故後、煙の中の汚染微粒子が地に落ちた後は、葉野菜類をよく洗うことなどの注意は必要である。しかし、周囲の牧草なども度重なる雨に洗われて汚染がもはや葉に付着していることはない。また不溶性の炎上微粒子については植物の根からの吸収率はとても悪い。日常生活に触ることはほとんどない。 高江区民の方へ報告を交え懇談する機会を得た。その際、ある家族が「家の窓を閉め、外に出ないようにしていた」と語った。危険回避に適切な知恵である。今後も起こり得る事故の際には、県民はぜひこの家族のように、洗濯物は中に入れ外出時はマスクをし雨には濡れないようにしていただきたい。日本が主権を持つことと、住民にあっては危険防止の知識が身を守ることにつながる。 (西原町、琉球大学名誉教授、73歳) 琉球新報 2017年11月29日 矢ヶ崎克馬