避難者通信55号「避難者 来年4月が真の苦難の始まり」など
皆々様
寒さの声が聞こえてくる季節となりましたが、お元気でいらっしゃいますか?
(1)避難者 来年4月が真の苦難の始まり
政府・福島県は指定区域外避難者への一切の支援を来年3月に打ち切り、そのような手段により「復興」と「帰還」を促進しています。
放射能の汚染が未だに低くはならず、生産物に放射能汚染が強く残存し、放射能によるとみられる死者や健康被害者が増えているのが日本の現状です。郷里には帰ることができない事情を感じている避難者が多数いらっしゃいます。
私ども「つなごう命の会」では原発事故避難者アンケートを実施し、避難者の皆様の実態を探りました。今月中ごろには報告書を出版し、皆様にご報告する予定です。
避難者をめぐる事態は「子ども被災者支援法」で、「支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」と謳われているにもかかわらず、来年4月には一切の支援が停止され、それにより経済的めどが立たない方が多くいらっしゃいます。
事故後五年目に住民保護法であるチェルノブイリ法を施行した、チェルノブイリ周辺国と全く対照的です。
何としても支援の継続を法律に基づき実施させるようにしたいと思います(支援という言葉は不適切でしょうか。私たちは「原発事故被災者に人権の光を」と訴えています)。
そんな時、原子力規制庁はさらに住民に被曝を強要する決定を発表いたしました。
(2)原子力災害時の事前対策における参考レベルが100mSvに引き上げられる!
本年(2018年)10月17日に、原子力規制庁は、原子力災害時の事前対策における参考レベル、あるいは原子力災害発生初期(1週間以内)の緊急時を対象に、「事前対策めやす線量」を、100ミリシーベルトとするということを発表しました。
これは「参考レベルを保守的に低く設定すること、あるいは、事前対策の策
定段階において極端な事故を想定することは、避難行動の対象範囲が必要以上に広がることになるなど、かえって益より害が大きくなる可能性がある」として100ミリシーベルトに設定したのです。
2011年に「原子力緊急事態宣言」を発した時に、現在日本に施行されている法律では公衆に対しては年間1mSvとされている被曝制限値の20倍にあたる20mSvを『制限参考レベル』として設定していたのですが、それをさらに5倍引き上げて100mSvとしたものです。
今後の原発事故時には、法律で設定されている被曝限界量1mSv/年を100倍に引き上げて100mSvとして設定するものであり、事実上、住民被曝させっぱなしです。法治国家として許せるものではありません。
まさに放射能に関する野蛮国と言わざるを得ません。
沖縄の民意に反して辺野古米軍基地を権力的に強行するファシズムと同レベルの施行です。
国際原子力ロビーの核産業存続をかけた住民保護から被曝させっぱなしの事故対策を世界に先駆けて具体化するものです。
私はかねてから「放射線被害を隠ぺいする情報操作の体系(国際原子力ロビーによる)「知られざる核戦争」が猛威を振るうと主張していますが、この決定はまさに「知られざる核戦争」の戦場が日本において権力が住民を暴力的に危機的に蹴散らしていることを物語ります。
(3)照射線量と吸収線量が同じ単位にされ(1990年ICRP)、単位が同じことを悪用して、環境量である放射線量を人の生活実態に依存する人の被曝吸収線量に混同させ、住民に過剰被曝を強要してきた政府
(単位が同じことを悪用する)
それ以前から、日本政府は法律に決められている線量既定の概念を外して恣意的に線量操作を行ってきました。嘗ては「照射線量」が、単位をレントゲン(R)とし,その内容は「標準状態の単位体積(1㎥)の空気に生じる電荷の量(静電単位esu)」とされて,生体の体に当たる前における客観的で,かつ,測定が相対的に容易な、放射線照射される人体に対して外力量として定義されていました。ところがICRPは1990年に単位を変換して、照射線量を
吸収線量と同じ単位としました。加えて照射線量を「用語解説」から外し(概念を使用しない)ました。こうして照射線量と吸収線量の区別を実際上も本質的にも外してしまったのです。
このことを利用して日本政府(ICRP)は環境量であるべき線量を人の行動に依存する実態的吸収線量に置き換え、法律定義の何分の1にしか相当しない量にまで過小評価しました。それは住民に高被曝を強要するものでした。
現在法律で定義されている線量限度は紛れもなく人の行動パターンには一切よらない「環境」量なのです。
(4)法律による被曝量限度は紛れもなく人の行動に依存しない環境量
①「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」の規定に基づく線量限度等を定める告示 によれば、住民の居住する「周辺監視区域」とは、「管理区域の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量が経済産業大臣の定める線量限度を超えるおそれのないものをいう(規則第1条)。」その線量限度は(実効線量として)「1年間につき1ミリシーベルト(1mSv)」と定められている(告示第3条)。
②さらに、「環境放射線モニタリング指針」によれば、「汚染環境の基礎データとして諸方面に情報を提供するもの」としてガンマ線の空気吸収線量率(グレイ毎時[Gy/h])をもちいることが規定されているのです。
ここで重大なことは両法律に規定されているのは、場所における線量(環境量)であり、人の吸収線量ではなく、空気吸収線量(環境量)であり、いずれも人間の行動に依存しない環境の汚染を表す量なのです。決して人間の実際の吸収線量ではないのです。
加えて政府支援で設置されたモニタリングポストは実際の値の半分しか表示しないシステムとなっています(矢ヶ崎克馬:「真値の半分しか表示しないモニタリングポスト」日本の科学者(2017))。恐ろしいことに何重にも過小評価をする体系となっています。
(5)政府は徹頭徹尾人間の吸収線量で過小評価
しかしながら、日本政府は汚染された環境を表す年間「吸収線量」を人間の行動に依存する人間の受ける実態量に誤適用しました。
曰く、「屋内の線量は屋外の線量の0.4倍であり、人は8時間屋外に居り16時間屋内に居る」と仮定して計算させるのです。それで導出された年間1ミリシーベルトは0.19μSv/hに相当するとされます。本来は0.114μSv/hが年間1ミリシーベルトであるのです。
この計算方法では、法律に基づき正当に計算された値の60%に汚染線量が過小評価されるのです。加えて公的測定量とされるモニタリングポストの値が半分しか示されていない問題が加わります。
(6)ガラスバッジを利用した科学の原理を無視した被曝線量評価
さらに原子力規制庁は、早野龍五らの科学を全く無視したガラスバッジを利用した調査研究結果「空間線量と被曝線量の関係は従来の7倍低い」とする値に飛びつきました。これはガラスバッジの非等方的感受性を無視して、ガラスバッジの示す低い積算吸収線量をそのまま科学的考察もせずに、科学の原理に悖る結果を採用しようとするものです。 すなわち、年間1ミリシーベルトは0.19μSv/hの7倍の値である、とする結果に飛びついて、従来の法律規制値年間1mSvを7mSvに引き上げようとの考えを示していました(平成30年1月17日(水)14:30~、原子力規制委員会記者会見録)。この改悪も決して実施されるべきものではありません。
東電事故を改めて位置付ければ、チェルノブイリ事故後、国際原子力ロビーが次の原発事故では原発産業と国に負担をかけないよう、言い換えれば住民を強度の被曝に晒すことにより事態を凌ぐことを世界の「体制化する」備えをいたしました。その準備万端が整った直後に東電事故が生じました。
(7)国際核推進ロビーが準備万端整えたところに東電事故は生じた
IAEAは1986年に生じたチェルノブイリ事故の健康被害を「甲状腺がん」だけに限定しました(実際はあらゆる種類の夥しい被害が記録される(ヤブロコフら:チェルノブイリの被害の実相)。
IAEAは1996年に、①避難はさせるな、②情報を統制せよ、③専門家を自由に動かすな、と次の原発事故処理のポリシーを定めました。東電事故が生じると福島に事務所を構えました。
ICRPは防護3原則の第1に(放射能拡散行為が)「正当化」されるのは「公益がリスクを上回ること」と謳います。奪われる人命(人格権)と発電(産業行為)を天秤にかけ、功利主義哲学が剥き出しにされています。原発産業は人を殺しても正当化できるという「特殊」産業なのです。
2007年ICRP勧告において、従前は計画被曝だけ(制限線量:1mSv/年)だった被曝カテゴリーを緊急被曝、現状被曝を付加して、事故時の被曝制限量を20mSv~100mSvに拡大しました。
このように具体策が定まった直後2011年に東電事故が生じたのです。
緊急事態宣言により当初20mSvにしましたが、原子力規制委員会はその最大限の値に設定したものです。
このように、アベ政府は原子力発電の再稼働を強行しつつ、住民に強放射線被ばくを押し付けて、事故が起こった際に原子力発電産業の負担を軽減し産業として生き延びることを保障しようとしています。もちろんこれは国の財政負担も最小限にする体制を整えようとするものでもあります。全て住民犠牲です。
アベ首相は「放射能による健康被害は過去にも現在もこれからも一切無い」と宣言し(東京オリンピック決定時)、全官庁あげて「風評払拭リスクコミュニケーション強化」を行い、事実上「放射線に健康被害が無いと思えば幸せになれる」という主張さえしております(復興庁:放射線のホント)。
日本は事実を重視し、住民一人一人が大切にされる国とならなければなりません。あきらめずに声を上げましょう。
カンパのお願いをいたします。。
アンケート報告集の出版や、座間味島保養施設「ゆうみハウス」の支援として
皆様のカンパをお願いいたします。
振替口座
口座記号番号: 01770-5-170377
口座名称: つなごう命の会 (ツナゴウイノチノカイ)
加入者払込み払出店 那覇支店
郵貯以外の銀行からの振り込みの場合
店名(店番):一七九(イチナナキュウ)店(179)
預金種目: 当座
口座番号: 0170377
11月の定例ゆんたく学習会は
11月10日(土)15:30~、牧志駅前ほしぞら公民館。 テーマは:大切な命―弱い人から犠牲に!!
―依然として深刻な放射能汚染食材ー
今後はずっと 第2土曜日の15:30~の予定です。
もうすぐ立冬です。
寒くなり始める折、くれぐれもご自愛くさい。
矢ヶ﨑克馬