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避難者通信57号  2019年2月14日

皆様お元気でいらっしゃいますか?

(1)沖縄県単独事業として来年度も原発事故避難者支援を内定

 沖縄県から予算案が提示されました。

「支援は継続していただくことになりましたが、支援金額は増やすことができませんでした」

 名目が住宅確保支援から生活再建支援へと変わりました。

 2年計画で再来年度は半額になり、その後の予定はありません。

 キーポイントは以下のようなものです。

  (⇒は本年度から来年度への変更点です)

(事業位置づけ) 協調事業⇒単独事業

(名目) 住宅確保支援⇒生活再建支援

(対象) 福島県が実施する家賃補助決定世帯

     ⇒上記+応急仮設供与(避難指定区域)終了者

(金額)月々1万円⇒年額12万円 (翌年度6万円)

(計上予算額)1300万円

(支給方法)精算払い⇒一括払い

 国や福島県と「協調事業」として行ってきた事業を単独事業として行うには

相当な障壁があったようです。

 本年度で「協調事業」が終了した後に来年度「単独事業」として継続して支援するのは、おそらく他都道府県では行われず、沖縄県唯一だということです。

 原発事故避難者に対する沖縄県の人道に基づく支援に深甚な感謝を表明します。

 残念ながら、私どもの要請「1家族月3万円が、辛うじて実生活を支えられる目安です」の訴えは通りませんでした。また、支援対象が相変わらず福島県内からの避難者に限定されています。

 正式には県議会本会議にて決まります。

 つなごう命の会は避難者の実態調査を行い(2015年、2018年)、それをもとに沖縄県に訴えてきました。

 避難者通信55号でも「来年4月が真の苦難の始まり」と訴えてきました。

 昨年度、今年度と2年連続で沖縄県から1家族当たり月1万円の支援をいただきました。

 来年度も支援をいただけることが内定し、大変うれしく思います。

 避難者の方が、勤め人として家賃分(例えば月6万円)を新たに稼ぎ出すことは至難の業です。現実の経済的困難を避難者の方がどう克服できるかが大問題です。

 「子ども避難者支援法」には、「避難者の意思により住むところが決定できるように」国は支援することになっていますが、事実は冷酷に切り捨てる兵糧攻めを行っているのです。

 事故後5年でチェルノブイリ法が施行され、本格的な住民支援が始まった、そのタイミングで、

日本では避難者住宅支援が打ち切られたことを、私たちはしっかりと記憶すべきです。

苛政は虎よりも猛なり。悪政を絶たねばなりません。

 国・福島県の、汚染が続くこと、死者が増加していることの事実と人権に背を向けた、民主主義国家ではありえない野蛮な行政措置に負けずに、沖縄の避難者の皆さん、全国の避難者の皆さんが、何としても凌いでくださることを祈るばかりです。

 このほかに、沖縄協同病院、医療生協、民医連さんには医療診察支援と避難者検診の支援をお願いし、実施していただいております。

 深甚な感謝を申し上げます。

 来年度も継続していただけるものと期待しております。

(2)3.11以降膨大な過剰死者数

図1は全国(厚労省人口動態調査)、福島県(厚労省人口動態調査)、

南相馬市(福島県ホームページ)の10万人当たりの死亡率の経年変化です。

図Ⅰ 死亡率の経年変化

図Ⅰ 死亡率の経年変化

2011年以降の死亡率増は「少子高齢化」によるものか?

 1998年から2010年までの変化を直線近似して黒の直線で示します。多少ばらつきはありますが、ほぼ直線的と言っていい変化です。

 ところが2011年で急激に増加し、それ3.11以前の直線から予想される値より増加したままです。 2011年は総人口に基づいて計算すると全国でほぼ10万人の死亡者増加(総人口およそ1億2千8百万人)があります。

 東日本大震災による死亡者数(死亡者数+行方不明者数)は18446人ですので、8万人ほどの東日本大震災以外での死亡者が居ます。

 各種病の重症病人が放射線被ばく(内部被曝・外部被ばく)を受けることによって免疫力の低下などで死亡する、お年寄りが「老衰」死する、放射能被曝で放射線倦怠症により事故などを誘発して死亡する、すでに確認されている周産期死亡増などが絡んでいると思われます。

この数は大問題ですが政府や専門家は沈黙の闇です。

 福島県の死亡率は緑色でプロットしてありますが、2011年以降の死亡増は全国の増加割合よりはるかに高いものです。

 これらは3.11以降福島県を中心に全国的に放射能が誘引した死亡増が展開している可能性を強く示唆しています。

 NHKでは2012年12月5日、番組「クローズアップ現代」で『お葬式が出せないどうする“葬送の場”』と題して「多死社会」という言葉を導入しています。

 全国及び福島県の総死亡率の変化は図に示すような経過をたどります。3.11以降の死亡増は「少子高齢化」という概念で予想されるカーブでは説明できません。すなわち少子高齢化では年々徐々に変化するのですが、現実は3.11で急増した後増えたまま予想直線と概略平行となっています。ということは、3.11で付け加わった新しい「死亡を増加させる原因」がそのまま除去されずに追加されたままで、2010年までの少子高齢化カーブに従うという経年変化カーブが形成されていると理解されます。追加されっぱなしの原因とは何でありましょうか?

 それは事故で分散された放射能がまず考えられます。山田耕作氏らによると(渡辺悦司ら「放射線被ばくの争点」緑風出版(2016))放出量はチェルノブイリの4.4倍程度と考えるのが妥当な量であるとされます。健康影響が及ぶ範囲は従来のICRPが主張していた「がん・白血病とごく少数の臓器機能不全」という過小評価はもはや成り立たず、放射線の作り出す酸化ストレスによる機能不全が全身に及ぶ多量な疾病を誘発し、放射線関連死は従来の概念をはるかに超えることなどが最近の病理学では明瞭になっています(吉川敏一「酸化ストレスの科学」診断と治療社(2014))。これらを考慮すると従来の犠牲者の数え方が如何に過小評価であるかを痛感します。

 全国総死亡者の増加数は2017年までの2010年以前からの予想直線から推察して30万人程となっています(この推定はあくまで直線近似に寄ります。直線は最小二乗法で決めています)。

 それだけの死者が政府の主張する「放射線による健康被害は皆無である」という主張により隠され、身近でバタバタと亡くなる人がいても「放射能がらみで亡くなった」ということを考えることさえ許されない状況が現出しているようです。

 これらの様相は報道されません。

 深刻な心筋梗塞や脳卒中の多い状況を見ても放射能のホの字も挙げられません(福島民報2018年12月20日)。

 最近では用語として「放射能」は禁句とされ、もっぱら「風評被害」のみが用いられる社会が成されました。このような中で私たちはありのままの現実を見る目を保たなければなりません。

 南相馬市の死亡率は赤いプロットで示します。市の死亡者数を市の住民登録数で除して10万人当たりに基準化したものです。

 2014年までは福島県の死亡率とほぼ同じですが、2015年で急増しています。2015以降を2014以前と比較すれば率にして15%ほども増加しているのです。

南相馬市立総合病院院長及川友好氏は同病院HPで「南相馬市の実人口は住民票数に関わらず2011年には周辺への避難により1万人を切るまで減少」という趣旨を述べ、2013年5月8日の衆議院震災復興特別委員会の参考人として「壮年層の脳卒中患者が震災前の3.4倍に増加」等と証言しています。  住民実人口はその後回復しています。住民票の登録数は2011年の約7万人から2017年の約6万人に漸減しています。市民の自主的避難とは別に、南相馬市の居住制限区域及び避難指示解除準備区域は2016年7月に解除され、現在は小高区を除いて避難指示などが解除されています。

なお、避難指示が解除された区域のうちの1中学校と3小学校が放射能基準値をオーバーしているために近接地域の学校で授業を行っている状況と聞きます。

 市の死亡率は住民票を母数として算出されていますので、住民票を市に置いたまま市外に避難している人も統計の中に含まれます。大多数の市民がいったんは避難し時間とともに帰還してきたという事実から推定すると次の仮説が成り立ちます。

2011年から2014年まで、ほぼ死亡率が福島県のそれと同じなのは市の多数の人が避難して、より放射能汚染の低い土地(福島県内のより汚染が低い場所あるいは他府県)で暮らしている条件下の人も含めてで死亡率が福島全県とほぼ同率だった(2012年と2013年はむしろ福島県より若干低い値を示しております。2014年は福島県と同率です)

 2015年から急増して福島県の死亡率より高くなった原因は、大多数の方が帰還したことと放射性ストレスの蓄積等による効果と推察されます。被曝の多い「除染作業」なども関係するかもしれません。

 上記のように南相馬に帰還することにより2015年~2017年の死亡率の増加がもたらされたとすると、

まさに恐ろしいことです。死亡率の増加の原因は他にも考えられると思います。

 専門家は現実をとらえ、分析を進めてほしいものです。

当該死亡率算出の詳しいことは https://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma30.html をご覧ください。

 安倍首相が「今までの今もこれからも放射線による健康被害は無い」と言明し、その線で原発事故の社会処理とオリンピック準備が図られています。全官庁あげて「風評払拭リスクコミュニケーション強化」を図っています。

 事実をありのままに見ないことは人権を無視するうえで常に先行される常套手段です。

 福島県民だけでなく、汚染が高かった地域の住民の皆さんに、自らの命を守るために、自らの人権を守るために、放射能被曝を避ける具体策を自治体、国に要求してほしいと思います。

 また、避難されている皆さんが、住宅手当が廃止されるのをきっかけに

高汚染地域に帰らざるを得なくさせられていることに大変な危機感を抱きます。

 ここに汚染地内外で、人権を守る共通の要求を掲げ、共通の人権擁護を強く意識し行動されることを望みます。

                       つなごう命の会 矢ヶ﨑克馬

追伸

ご支援の訴え

アンケート報告集の出版は沖縄県に避難者支援の継続をして戴く上で大きな役割を果たしました。しかし残念ながら出版費は赤字です。

その出版費などを支えていただくために

皆様のご支援をいただければ幸甚です。

 

振替口座

口座記号番号: 01770-5-170377

口座名称: つなごう命の会 (ツナゴウイノチノカイ)

加入者払込み払出店 那覇支店

郵貯以外の銀行からの振り込みの場合

店名(店番):一七九(イチナナキュウ)店(179)

預金種目: 当座

口座番号: 0170377

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