原発事故避難者通信 62号 2019年5月5日 概説――「放射線による健康被害は一切無い(安倍首相)」のファシズム――
皆さんお元気ですか?
沖縄の「つなごう命の会」です。
10連休がそろそろおしまいになろうとしています。
南京大虐殺、沖縄の集団死(いわゆる「集団自決」)などなどが歴史上から抹殺されようとし、加害者である日本が「最終的に不可逆的に」「解決済み」と称する旧日本軍の性奴隷問題、徴用工問題(1991年8月27日、日本の参議院予算委員会で当時の柳井俊二外務省条約局長が「(日韓基本条約は)いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることができないという意味だ」と答弁。等の過去のやり年がある)に関して、マスコミの忖度ブリが著しく目立ちました。世継ぎ報道のマスコミ:平成の事件振り返り:等から「福島原発事故」が消されたという現代版歴史修正が行われたようです(https://lite-ra.com/2019/04/post-4690.html テレビ各局の“平成事件振り返り”から「福島原発事故」が消えた! 広告漬けと政権忖度で原発事故をなかったことに LITERA(リテラ)2019.04.30 08:20)
今回は「知られざる核戦争」についてです。
安倍首相の「放射能による健康被害は一切無い」(東京オリンピック招致決定時の記者会見)の虚偽と「事実を報道しようとしない報道」の陰に隠された巨大な〝死亡率異常増加〟(放射能による大量犠牲)が隠されている「知られざる核戦争」を報告します。
要点は 「あなたに迫りくる危険をどうか察知してください!」
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概説――「放射線による健康被害は一切無い(安倍首相)」のファシズム――
核戦争は巨大な破壊力の核兵器を投下するあるいはそれで威嚇することと理解されている。それに対し、「知られざる核戦争」は、ヒロシマナガサキ原爆投下以来、アメリカを中心とした核戦略と原発を推進するためにとられた「放射線被害を市民に認識させない情報操作」の核戦争を指している。この核戦争は著者による造語であるが、一般市民に未だ「知られざる」状態にあるために「知られざる核戦争」と称す。
ヒロシマナガサキ原爆による放射性降下物放出を隠しその被害を隠し続ける。その後500回以上を記録した大気圏内核実験、採鉱や核兵器核燃料製造、原発運転と再処理工場操業、核・原発事故、劣化ウラン弾使用などによって莫大な量の放射能が放出されて環境中に蓄積した事実を隠し、全世界でその被曝による人的被害が想像を絶する規模(ECRR推計で6000万人以上)で続いていることを隠している。これが「知られざる核戦争」の実態である。
福島原発事故後は史上最悪の「知られざる核戦争」が展開されている。日本に典型的なファシズムが「知られざる核戦争」を一層激しいものとしているのである。
政府発表でさえ広島原爆の168発分(実際はその10倍程度とみられる:渡辺悦司ら:放射線被ばくの争点(緑風社)2016)の放射性物質が放出したにも関わらず、「放射線による健康被害は一切無い」の言明(東京オリンピック決定時の安倍首相記者会見)が先行した。
これは原爆投下直後の「知られざる核戦争」に匹敵する。1945年9月6日、マンハッタン管区調査団の指揮官トーマス・ファーレル准将 が東京で記者会見して言明した「広島・長崎では,死ぬべき者は死んでしまい,9月上旬現在において,原爆放射能で苦しんでいる者は皆無だ」、「残留放射能の危険を取り除くために,相当の高度で爆発させたため,広島には原爆放射能が存在し得ず,もし,いま現に亡くなっている者があるとすれば,それは残留放射能によるものではなく,原爆投下時に受けた被害のため以外あり得ない」(「広島ジャーナリスト」HP)の虚偽宣言に匹敵するものである。東電事故後の放射線被曝対策は、戦後アメリカがファーレル言明に沿って原爆被害を処理した歴史に瓜二つである。
政府はその虚構をシナリオの芯に据え、全官庁あげて「風評払拭リスクコミュニケーション強化」を大宣伝している。放射線被ばくの現実を「心の持ちよう」にすり替えるのだ。首相の「健康被害は一切無い」という虚言が事実を乗り越えて「現実を見る目」となる。虚偽の基に被曝強要策が進む。指定区域外避難者に対する住宅支援を停止することによって、指定区域外避難者を避難者統計から外し、避難者が減少したことにする。避難指示区域を解除することで、汚染が無くなったことにする。あろうことか被曝被害を拡散拡大することで高汚染地域の被害を見え難くして、「福島の放射線被害は無い」を合理化するという屋上屋を重ねる虚偽の世界が日本の現実である。
福島原発事故後ほどなくも主として文科省から各大学長と各学会長宛てに「放射能に関するデータは政府が発表するデータである。個別の研究者が調査したり研究したりすることの無いように」という趣旨の通達がなされた。もちろん政府が責任もって諸測定を行ったのではない。「データが無いことは被曝が無いこと」とされた。チェルノブイリ事故後にIAEAウィーン会議(1996)で今後生じ得る原発事故に際して、 ①避難させるな、 ②情報を統一せよ、 ③専門家を自由に動かせるな、 との指針をまとめたが、その方針を受けてのことであった。
IAEA(国際原子力機関), UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会) 等を国際原子力ロビーと規定する。IAEAはチェルノブイリ事故の教訓として「住民が汚染された土地に永住をすることを前提に、心理学的指針も含めて従来の被曝防護を見直す方針を明確にした(1996年、IAEA「チェルノブイリ10年」)。原発事故版の「知られざる核戦争」の基本路線だ。ICRPが住民への被曝強制を指針として打ち出し、IAEAは福島に事務所を出張させ実地指導を行う。この方針に輪をかけて日本政府は虚偽に満ちた情報処理を行う。
早すぎる「帰還」、「復興」。事故後たった9年目、原子力緊急事態宣言が出されたままで、放射線被曝制限値が20ミリシーベルト/年(日本の法律値は1ミリシーベルト/年)のままで、オリンピックが開催されようとしている。
指定難病患者の異常増、各地の病院患者の異常増加などが伝えられている。爆発的に大量発生している小児甲状腺がんを原発関連と認めない。それを突破口に、一切の健康被害は認めず、一切の予防医学的な措置は封じられる。原発事故以降に発生した大量死亡率増加は報道さえされてない。
東日本(東北、関東)の食材汚染は今なお非常に深刻な汚染を示し、メルトダウンした炉心からは空に海に放射性物質が放出し続けている。日本は危険な放射能環境に満ちている。
周産期死亡率が福島事故9~10か月後(2012年)から、放射能高汚染県(12%増)、中汚染県(8.4%増)で増加が始まって現在も継続している。死亡率は土壌汚染に相関していた。(ドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス(2017年2月)(Strahlentelex)」No. 722-723 / 02.2017 www.strahlentelex.de )
他方、乳児の先天的奇形:複雑心奇形は2011年から、停留精巣の奇形は2012年から増加が確認され、日本全土すなわち土壌汚染の低い地域にも分布し、先天的奇形の原因は土壌汚染の多寡に拠らない食物流通を通じた内部被曝によることが強い蓋然性として推察される。すなわち妊婦の内部被曝の結果であることが推察される。(村瀬ら: 「Journal of the American Heart Association」に 2019年3月13日掲載、村瀬ら: 「Urology」に 2018年5月8日に掲載された「Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.」)
厚労省人口動態調査から全国、福島県、南相馬市の死亡率を検討すると深刻な死亡率の異常増加の事実が認められる(小柴信子及び矢ヶ﨑)。
その一部を後出の図2(全国、福島県、南相馬市)に示すが、1998年~2010年の死亡率はほぼ直線的な変化と見做すことができ、その変化を基礎にすると2011年以降の死亡率は全国的に異常に増加する。事故後2011年から2017年の間、予想直線を上回る異常増加死亡数は福島県で11,200人(95%信頼区間7,710人~14,700人)、全国で276,000人(95% 信頼区間は164,990人~387,100人)ほどになる。このような増加は全都道府県に及ぶ。
なお、2011年の地震津波の関連死は19416人と発表されているが、全国での2011年における死亡者の異常増加分は6万1千人に上り、地震・津波の犠牲者以外に大量の犠牲者が出ている。死因別の死亡率も2011年を急増する。日本全国でお年寄りの老衰死が激増し、アルツハイマー、認知症などの脳神経に関わる死亡率が急増した。異常な死亡率増加は2017年以降さらに上昇する気配を示す。
危険な放射能環境で開催されることを知らずに日本にやってくる世界の人々は放射線被曝(外部被曝と呼吸と飲食で蒙る内部被曝)に晒される。日本政府と国際原子力ロビーの強行する「知られざる核戦争」の犠牲者を増やしてはならない。世界の市民・日本の市民は日本で進む「知られざる核戦争」:ファシズムの危険を洞察すべきである。
危険極まりない「復興」「オリンピック」が最大の事故後対策として政治の中心に据えられ、オリンピック競技などが汚染地域で設定される。これが姿を変えた「日本型ファシズム」である。
このような多数の異常死亡者増が存在することと、東日本における放射能食品汚染が今なお深刻であることと、今なお、メルトダウンした炉心から、空に海に放射能汚染が拡散され続けている事実を正常に受け止めれば、「原子力緊急事態を解くことができない「放射能環境」下で行われるオリンピック日本開催に伴う危険性を世界に警告せざるを得ない。
「日本で生じている健康被害の実態を世界の方々にお知らせしなければならない」と道義的に強く思うのである。
詳しくは添付ファイルをご覧ください。 (矢ヶ﨑克馬)