原発事故避難者通信65号2019年8月1日「原爆忌」①
各位。沖縄の「つなごう命の会」の矢ヶ﨑克馬です。 転載拡散自由です。
原爆忌 1 核兵器も原発も無くすゾウ! (1)猛暑を元気で乗り切ろう! 間もなく原爆投下以来 75回目の原爆忌8・6、8・9がやってきます。 皆さんお元気で猛暑を乗り切っていますか? 避難されている方々につきましては、順調に新しい世界を開拓している方々もたくさんいらっしゃいますが、初期被曝による体調不良が払しょくできない、子どもたちの成長過程についての困難やいじめなど深刻な課題が続いています。 政治が切り捨てている困難な中でも、希望を失わずに毅然として賢く対処していきましょう。 今も汚染の厳しい地域に生活する方々は「風評被害」払拭で「心の平安」を得ることに安んじることで満足するのではなく、被曝による死亡者が増え続けている現実を、辛くとも、ありのままに見て、「放射能の餌食」にならないで命を守る視点を、ご自分で持つ、また、行政に求めることが大切と思います。 死亡者が増えていることは大部分の市民の皆さんがお気づきのことです。 ストレスがあった、お気の毒だった、で済ませ、おおもとの放射線被曝を語らない(語ってはならない)社会関係はもうやめましょう。 復興は悲願です。しかし放射能を語らない復興はどんなことを意味するでしょう? 健康被害は一切自己責任です。辛いことは全部あなたご自身のせいにされます。 「社会」の目はそこで頑張ることのみが評価されます。 現実をありのままに見ることは勇気がいります。『食っていく』上でも客観的事実を「主権者」としてみることは必要でしょう。 私は、事故後7年間で30万人の人が放射線被曝で命を失った(強い蓋然性で放射線被曝により命を失ったと見なせる人が30万人程もいる)ことを必死でお伝えしております。 (原発事故後7年間で30万人になんなんとする人々が被曝により命を失っている状況は、http://npg.boo.jp/kieyuku/hibaku_hinan/hibaku_hinan.htm 「原発無くす蔵」、「消えゆく原発」、「被曝と避難問題」の「避難者通信62号」に詳しく報告しております。ご参照ください)
「健康被害は一切出ておりません」と宣伝される中で、「否、犠牲になった方が沢山います」ということを申し上げております。 「犠牲が無い」という政治は間違っております。 放射能被害の本当のことは科学的に予測できます。予防医学的に防護する手立てを打つことができます。 しかし「健康被害は一切出ておりません」という虚偽にしたがっている社会です。何故なんでしょう? 真実のことは、犠牲になられた方が出て、初めて、「犠牲があるんだ」と指摘できるようにさせられているのが現実です。 こんなつらいことはありません。 犠牲になる前に救うことができたのに「殺されてから」指摘するしか方法が無いのです。まるで悪魔の指摘です。 肝心なことは当時する主権者が自らの人権を主張する以外には無い。行政を変え、政府を変え、少しでも命を守る具体策を得る以外には解決する方法は無いのです。 ご自分が真実をありのままに知り、人権・命を守る基本を認識することが必要です。 客観的事実をありのままに知り、人権を貫く方向で対応することを求めましょう。 汚染は、悲しいかな、ずっと続きます。今からでも遅くは無いのです。 もうこれ以上誰もが放射能の餌食にならないことを祈る! (2)通常兵器的核兵器使用と「放射線被ばくは健康被害を与えない(安倍)」 核兵器禁止条約が国連で採択されてから2年を経ました。この条約に署名し批准する政府作りが求められています。 しかし、人類の誠実な願いに対して、米核戦略は非常に挑発的です。 ①「人類の英知」を破壊する新たな核使用計画 東京新聞(7月29日)等が米国の挑発的な核使用計画を伝えています。米軍が先月、戦闘中の限定的な核兵器使用を想定した新指針をまとめていたことが分かった。核爆発後の放射線環境下で地上戦をどう継続するかなどの課題にも言及している。オバマ前政権は核の先制不使用も一時検討するなど「核の役割低減」を目指したが、逆行する内容。核弾頭の小型化を進めるトランプ政権下で、通常戦力の延長線上に核戦力を位置付ける傾向もうかがえる。 核兵器を使いやすくして、通常戦を核化しようなどということは絶対許すべきではありません。国際世論で包囲しやめさせましょう。 ②核推進世界戦略――核兵器使用も原発維持も共通土台 安倍内閣の下で「放射線による健康被害は一切ありません」という今までの科学的探究を一挙に破壊しようとする暴挙は、米核戦略の「通常兵器並みに核兵器を使おう」という力の核政策を完璧に補うものです。 原発事故での犠牲者を「自己責任で勝手に死んだ」とするアベ政治の棄民を許さないと同時に「核兵器を通常兵器並みに使用して「放射能の害は全く無い」として使用における閾値を下げることも許すことはできません。 (3)核兵器禁止と原発廃止:「推進」と「禁止」の戦略の幅と奥行きの違い ①核推進勢力の戦略は巧妙で総合的である 核拡散防止条約では原子力の平和利用(原発推進)は核兵器の独占体制維持(核不拡散)の不可欠要素として位置付けられています(条約の構成を見れば歴然としています)。 IAEAは核兵器等の査察と同時に原発の国際推進役として機能しています(1996年のIAEAウィーン会議がその象徴)。 この問題は昨年解説いたしました。「被曝と避難問題」の「避難者通信51号」をご覧ください。 ②人類の英知は巧妙な核推進戦略を上回る「総合戦略」を持ちましょう 残念ながら「核兵器禁止条約」は前文で「この条約のいかなる規定も,無差別に平和的目的のための原子力の研究,生産及び利用を 発展させることについての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならない ことを強調し,・・」と記し、核の平和利用を何の条件も付けずに容認しているのです。 核に関する一般的な平和的研究と原子力発電という核の無謀な実用化とは明確に識別すべきです。たとえ一般的な核研究に道を開いておくにしても、放射能の生成と「半減期」をコントロールする科学的術を持たない状態での商業利用は英知ある人類のなすべきことではありません。本質的な意味で制御できる 科学が無いまま「実用化」されています。これぞ核推進大戦略のアキレス腱。 チェルノブイリ、フクシマ、諸々、が雄弁に物語っています。 何万人という人々の故郷を永久的に奪う「魔の発電」手段です。核兵器禁止条約がこの認識が無いことは、「人類の英知」が未だ戦略として行き届きかねている姿を現しています。 英知は「巨大な破壊力を持つ核戦争」に対しては巨大な誠実さを示しました。 第2の核戦争:「知られざる核戦争」(核被害を見えなくする情報戦争)の面でも巨大な英知を示すべきです。 ③知られざる核戦争の凄まじさ 要するに核推進側の戦略に対して核兵器禁止側の戦略は1枚箍(タガ)が少ないのです。 放射線被曝で死んだ人の数は6000万人を 超えており(ECRR推定)熱核戦争で虐殺された人の数を桁違いに凌駕しているのです。 核兵器禁止条約の構え等を見て、「知られざる核戦争(被曝被害隠しの情報戦略)のすさまじさを改めて感ずる次第です。 核兵器と原発の禁止目指して決してあきらめずに頑張りましょう! ④原水禁運動に巣食う「放射線被曝推進論者」たち 原水禁世界大会のリーダーの一部に数年前は「放射線被曝は危険である」ことを説いていたのに、最近日本政府と同調して「被曝の健康影響が限りなくゼロに近かった…と明言すること」に「人々がどれほど安堵するか」こそ「重視」するべきである」などと放射線危害に対する基本姿勢を180°転換させた論を張る者が依然と居座っていることである。 昨年の原爆忌に際して以下のように記述しました(上記原発無くす蔵の「被曝と避難問題」の「避難者通信50号」参照) 悲しむべきは核兵器禁止の最前線に立つべき日本原水禁運動の幹部達が、日本政府が行っている第二種の核戦争「知られざる核戦争」の虚偽の情報操作に全面協力していることだ。 アベ首相はオリンピック招致が決まった時の記者会見で「健康に対する問題は、今までも、現在も、これからも全くないということははっきりと申し上げておきたいと思います。」と言明した。健康被害の公式認知はまさにその言明通り進んでいる。しかし事実は決定的に異なる。 事実とアベ言明のギャップを埋めるために「知られざる核戦争」:情報操作は熾烈を極める。全官庁あげての風評被害対策、復興庁による「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」。「嘘で固めた「放射線のホント」パンフ大宣伝、農林省による「今、私たちにできること、風評に惑わされない生活をしよう」、「食べて応援しよう」キャンペーン。 民間では、児玉 一八 , 清水 修二 , 野口 邦和 等による「放射線被ばくの理科・社会」、池田香代子、清水修二、野口邦和、安斎郁郎らによる「しあわせになるための『福島差別』論」等々。 「被曝による健康影響はあるのかないのか」という問題に対して「これを判断する基準は『どちらが人々とりわけ被害者のしあわせにつながるか』ということであるべきだ」(P158)。「科学の問題」ではなく「社会的合意の問題」である(同)。「『放射線被曝による健康の影響はこれまでも、またこれからも考えられない』という結論が出るのが、(福島)県民にとって、一番望ましい」(P150)。「被曝の健康影響が限りなくゼロに近かった…と明言すること」に「人々がどれほど安堵するか」こそ「重視」するべきである(P64)。」 福島差別論では放射能問題は事実の問題ではなく社会的合意の問題であり「放射能被害が無いと思うことが幸せの道」と説いているのである。さらに 「福島事故の健康影響全否定論は、その裏面として、論理上は必然的に、「使える核兵器」や核兵器使用の容認論、結局のところ、帝国主義が準備している核戦争の肯定論へと進んで行かざるをえない内容を萌芽的に含んでいる。事態は、そのような危険な論理を、核兵器に反対すべく組織されてきた、日本の原水爆禁止運動の指導部のトップの一人(野口邦和・原水爆禁止世界大会実行委員会運営委員会共同代表)が中心になって主張するに到っている。このような文字通り「恐ろしい」異常事態が進んでいる。」 核推進の巨大な権力は原水爆禁止運動にも「核容認」への変節を作り出す戦略を進めております。 人類の英知は、事実をありのままに見て、最も適切な「人類の戦略」を賢く創出しましょう。