原発事故避難者通信72号 続く放射能汚染―人にも環境にもー
≪みんな事実を知ろう!みんな放射能から命を守ろう!みんな頑張ろう!≫
沖縄の「つなごう命の会」の矢ヶ﨑克馬です。
転載拡散自由です。
皆々様
もう師走ですね。頑張って来年は良い年にしましょう。
寒くなる折ですから、十分にご自愛ください。
私たちは「放射能公害被災者に人権の光を」というスローガンを掲げて、原発事故後の人権状態を捉えています。
放射能問題では、日本の「人権の低さ」が目立ちます。もちろん「人権の低さ」は
「放射線被曝を防護しない」、「住民の命を軽視する」ことです。
人権の低さは政府の住民の命と暮らしを守る基本がなされていないことに起因します。
(1)「桜を見る会」招待者名簿が国会質問のための資料請求がなされた直後に破棄されました。
安倍政治の腐敗は、この一件で象徴されます。
首相らの出鱈目ぶりを官庁上げて糊塗する。その場が凌げたら万事OK。よこしまな権力が利権を欲しいままに税金を食い荒らす。誰にでもわかる悪徳が誠実な営みを破壊し尽くす。
大学入試そのものを〝企業の稼ぎの場〟に変える『入試改革』、しかもシステムづくりが文科省ではなく安倍直々の内閣府が進行させるという権力狂乱。
モラルを破壊し、住民を監視し、国民を食い物にする「戦争ができる美しい国」。
誠実な社会を願うものは怒りを持ちましょう。この国を誠実な民主主義の国にしましょう。
「右向け右」と言われたら、何も考えずに何の人権の基準も持たずに、右を向かなければならない。
それが「美しい国」。
そんな振る舞い(未来の見えない政治の下で絶望から来ているのかもしれません)から脱却しましょう。
生きる限り希望を持ちましょう。それが生きる道です。
(2)仲村哲さんがアフガンでテロに遭いました。「一隅を照らす」「砂漠に水を」。
掛け替えの無い精神と実践のリーダーの喪失。残念でなりません。心から哀悼の意を表します。
これを口実にした「武力で平和を作る美しい国造り」が
新たな武力体制をもたらし住民監視の国家体制を整えることに警戒しましょう。
中村さんの生き方を生かす世界作りが大切です。
改めて、
(3)チェルノブイリ原発事故と東電福島事故を比較する
①チェルノブイリ事故後住民は1mSv/年 を標準として「被曝防護」されました。
日本では「永久的に汚染された地域に住民が済み続けること」が強制されました。
国際原子力ロビーの「被曝哲学」が逆転したのです。http://blog.torikaesu.net/
②チェルノブイリでは「移住義務(もちろん生産禁止)」を内部被曝も入れて年間5mSvとしましたが、日本では20mSv(日本では外部被曝だけを勘定しているのでチェルノブイリ式に内部被曝も含めると実質32mSv)でやっと規制し始めます。
⑤チェルノブイリではありえなかった日本独特の被害は、チェルノブイリでは居住が規制された汚染領域で約100万人の方が居住し生産し続けました。その結果汚染食料が全国的に流通し(「食べて応援」でむしろ積極的に流通し)2011年から7年間で死亡者の異常増加が27万6千人に上りました(厚労省人口動態統計を矢ヶ崎が分析しました)。http://blog.torikaesu.net/
②事故後5年で住民保護法であるチェルノブイリ法が成立しました。そのタイミングで 日本では避難者の住宅保証が停止される決定がなされました。 日本は異常に短い期間で住民に帰還を迫り「復興」を煽っています。 例えば南相馬市では市内に高汚染地域が存在しますが、住民が事故後一斉に避難しその後帰還しましたが、2015年以降は異常に高い死亡率を記録しています(矢ヶ崎克馬:ヒバクと健康LETTER2019年7月1日号、一般社団法人被曝と健康研究プロジェクトhttp://hibakutokenkou.net/library/)。
③チェルノブイリでは事故後7か月で石棺が施され、放射性物質の環境への拡散が基本的に防止されました。 しかし、日本では8年半経過した今でもメルトダウンした原子炉は環境から隔離できず、地下水を通して海へ、炉心から直接空気中へ、汚染された排気塔などから空気中へ 常時放射性物質が拡散され続けています。回収された汚染水はALPS(汚染浄化装置)を通したり通さなかったりした汚染水タンクが満杯となり、これも常時トラブルが生じ垂れ流し状態です。 これを「海に流すしかない」とさらに環境汚染を重ねます。
政府・東電は世界に面目の絶たない環境汚染をただちに止める手立てを打つべきです。
④「データを残さない、データを破棄する」ことが原発事故処理の日本政府の処方箋でした。 放射線の拡散状況を示す「具体的なデータは無い方が良い」でした。 まず事故直後の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が隠されました。 用意されていた「安定ヨウ素剤」は「パニックを招く」と配布せず。 諸核種からの汚染状況を丁寧に測定することはありませんでした。 甲状腺の被曝線量調査も「パニックを招く」として測定されませんでした。 小児甲状腺がんの多発も科学的に分析しないことで「原発事故とは関係ない」と結論しました。
データを取らないことで「健康被害は一切ありません」(安倍首相オリンピック招致記者会見)を、その後の行政の基本指針とすることができました。「健康被害が無い」の仮定が現実に健康被害を覆ったのです。 現実は2011年以降7年間の死亡者の異常増加が27万6千人でした(矢ヶ崎克馬:ヒバクと健康LETTER2019年7月1日号、一般社団法人被曝と健康研究プロジェクト http://hibakutokenkou.net/library/)。
今号は、
1 被曝規制の考え方の変化(国際原理力ロビーおよび日本政府の住民被曝強制策)と被曝被害を小柴信子さんの提供する「どうしても取り返すために」のサイトhttp://blog.torikaesu.net/ に掲載された
(1)日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少
(2)放射線防護哲学の逆転に反対する―「防護する」から「高汚染地に住み続けさせる」核推進体制―
(3)「放射能汚染水の危険と大阪湾等への放出反対」を紹介します。http://blog.torikaesu.net/ をご覧ください。
2 原子炉をめぐる最近の状況を、根本仁さんが矢ヶ崎宛てのメールとして記述してくださいましたので紹介します。
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2020東京五輪を「復興五輪」と名付け【福島原発事故被害は終わった】と印象付けたい安倍政権の思惑を、アッサリ否定する事態が次から次に起きているフクシマ。2020東京五輪の聖火リレーのスタート地点近くで高い放射線量が測定され、再び除染が行われたことが環境省への取材で分かった、とNHK福島がローカルニュース枠で伝えました。
ICRP(国際放射線防護委員会)が長年採用してきた「一般人の浴びる放射線年間許容量=1ミリシーベルト=1時間当たり0.23マイクロシーベルト」に照らしてみますと、今回見つかった1.79マイクロシーベルトという測定値は7.78倍に当たります。 それでも「目安を下回っている」と表現されているのは、添付いたしました「安倍政治と内堀県政」で明らかなように、2015年6月12日の【避難指示解除の目安となる放射線量を年間20ミリシーベルト以下】と、これまでの基準を20倍に引き上げた閣議決定にあります。年間被ばく線量20ミリシーベルトはICRPが「原発の爆発または爆発の危険性がある時の緊急時における臨時的な最低基準」です。 安倍政権はこの数値を持ち出して避難住民の元の住まいへの帰還を促し、内堀福島県知事の住宅支援打ち切り策と併せて半強制的に住民帰還を進めてきています。 住民帰還の条件である【年間20ミリシーベルト以下】は、<緊急時における臨時的な最低基準>であり、安全が確保された上での帰還基準ではないことに大きな問題があります。
安倍政権と東京電力は様々な数値を政治的に使い分け、原発事故後の様々な危険極まる事実の隠ぺいに血道をあげてきました。今月2日に官邸で開かれた政府の廃炉・汚染水対策チーム会合では、新たな目標を明記した福島原発廃炉の工程表「中長期ロードマップ」の改定案が示され、廃炉完了目標を『事故から30~40年後』とする、これまでの目標を維持しました。
しかし、廃炉作業の入り口に過ぎない【排気筒切断】でさえ人力で切断せざるを得ないようなトラブルが頻発している経過を見れば、40年で廃炉の完了など100%あり得ないと断言できます。 まして原子炉圧力容器の底が高熱で溶け、核燃料が原子炉格納容器の底にコンクリートや鉄片などと混じりあった核燃料デブリ880トンが手つかずの状態で存在しています。これまでは、遠隔操作のカメラでそのほんの一部の映像を見ることが出来たにすぎず、全容解明など全く出来ていません。 まして核燃料デブリの取り出し方法さえ決定していない状況で、どうして【30年~40年で廃炉完了】などと言えるのでしょうか。
兎に角【“今だけ”言いくるめればそれでよし】を身上とする安倍晋三の本領!とだけは言えそうです。
2019.12.4NHK福島「聖火リレー出発地付近で再除染」(動画2分26秒)