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第103号避難者通信ー市民連合/野党共闘は失敗であったか?

第103号避難者通信ー市民連合/野党共闘は失敗であったか?

皆々様 お変わりございませんか?

総選挙が終わりました。 市民連合/野党共闘の躍進を期待いたしましたが、結果的には立憲民主党も 共産党も後退し、社民党は現状維持、新撰組は1から3倍増という結果でした。

「野党共闘は敗北した」と言われるが果たしてそうでしょうか?

表1にNHK世論調査による政党支持率、今回の選挙結果などを示す。

1 政党支持率から推察する当選者予測数と現実の当選者数

選挙区については後ほど考察するので、まず比例区の結果について解析する。

表1に現れる選挙公示前における政党支持率を見てみよう。

自民党支持率が38.6%であるのに対して他の政党は立憲民主党の8%を最高として全て自民党に比しその21%以下である。

この支持率を基本勢力と考えて、また、比例の選挙区分はないとして、予想獲得 議員数(その党の基礎体力としての当選数)を算出してみる。

まず、立憲民主党は23議席が得られる。 公示前の62議席は、支持率から算出される予想(基礎体力)に比べれば随分多 数で、現状維持がとても難しいことが予想される。 国民民主党や希望の党との合流を行って多数になっていたが、それに伴っての 支持率は上昇していなかったのだ。

この基礎体力と見なされる予測数が23議席に対して比例当選者が39議席。

予測の1.7倍ほども獲得している。 この予測手段の側面からは「良く奮闘した」という数字だ。

ちなみに自民は予測議席が95に対して公示前が66議席。今回の比例当選者 が72であり公示前比6名の増であるが、それは飽くまで支持率から予測され る基礎体力以下である。

共産党は支持率から考慮した予想議席数が9であるのに対して実際の比例当選者が9。予測どおりの議席が得られている。

ちなみに共産党は、従来は全ての選挙区に立候補させていたが、野党共闘(62 選挙区で統一候補)を実現させるために予定候補を引っ込めている。

選挙現場の口数が少なくなって宣伝量が減少しているという不利を背負っていた。 野党共闘の推進役として期待したが、公示前に比して2議席減となった。

他の党についての分析は割愛するが、基礎体力から推察して立憲民主党も共産党も後退したとは言い切れない。 むしろ比例区だけ見ても立憲は基礎体力から比べれば良く奮闘しているのだ。

「政権交代」とぶち上げた構えの大きさからは、拍子抜けと見られ、随分の後退 のように言われているが、訴えが神通力を発揮するところには至っておらず、まあまあの「でき」に終わったのが、比例区の結果である。

2 選挙区の「野党共闘の成果」

野党の選挙協力が成り立った選挙区と共闘しなかった選挙区について考察する。

表2に選挙区での京都による結果と共闘しない選挙区の結果を整理する。

共闘が成立した選挙区での勝率は29%であるのに対し、共闘をしなかった選挙区の野党の勝率は8%である。

勝率が50%を上回らなかったにしても、 明らかに野党共闘の効果が浮き彫りに出ている。

3 どう総括するか?

(1)立憲は「共産党は全体主義」(筆者は反共主義と判断している)と規定する連合(日本労働組合総連合)に片足を置いている。  野党共闘の政策で一致し合力するという政治面だけでなく民主主義をみんなで 確保するという思想面に於いてもリーダーシップを発揮して欲しかったが、そ うはいかなかった。日本市民の思想的リーダーの役は果さなかった。

立憲の支持層が野党共闘部分と反共部分とが矛盾する中で、民主主の観点から 野党共闘の正当性を論じては来なかったのである。

根本矛盾を分析せずに、「右や左の旦那様」という姿勢では市民大衆は信用する ことは出来ない。 

野党共闘の威力が発揮できなかったのはむしろこの姿勢に起因していると見な すべきではないだろうか?

ちなみに、今回は「争点」とされた諸課題に各党異口同音に(リップサービスも含めて)政策を並べた。せっかく自民党が「資本主義の見直し」をいっているのに「新自由主義」で以下の社会が破壊されたかの総追求が成されなかった。階級 的ものの見方は提示されなかった。憲法改悪が差し迫った状態となったが、その危機感ではなく、一般的言及に終わった。

今回の総選挙は「争点ぼかし」の展開であったように思う。


(2)1960年安保を総括して執られた「ケネディーライシャワー路線」では 日本統治のための基本戦略は「共産党の孤立化」であり、政治、労働運動、平和 運動、民主運動のあらゆる局面に「反共」が厳しく適用され責められた。

1980年以降の日本の社会状況はこの基本線で動いてきた。

唯一野党共闘が保たれたのは、長い間米軍支配下に於いて祖国復帰を運動してきた沖縄だけであった。今日のオール沖縄の土台を形成している。


(3)同時に日本国内の公教育に於いては「主権者を育てる」教育は根本から破壊されてきた。

主権者の素養として何が必用かと聞かれると私は、3要素を上げる。


①  「ありままを見て取ることができる」こと。逆に言えば、主権者意識がなければ自分の力でありのままを見て取ることは絶対できない。自然現象も社会 現象も共に自分の目でありのままを見て取ること:私は「事実をありのまま に認識することは民主主義の土台」と標語している。


② 「自分で判断できる」こと。判断できるためには、自然と社会とについて科学的に正確で民主主義モラルに則った知識が必用である。 知識を身につけるためには本人の「納得」が不可欠である。

この民主的モラル(常識・原理)も科学的知識も、日本の公教育に於いては生徒児童の納得の上に身につける配慮は破壊されてきた。 曰く、「先生の教えるままに『正解』を記述することができなければ、受験競争に負けます。 分かっても分からなくても先生のいうとおりに回答できるようにしなさい!」

その上、「日の丸・君が代」。しつけを教育中心課題としてきた。 近代教育の本質(人間の自由と尊厳を実現し、本人の持てる力を開花させ、 他者とつながって生きる力と技を獲得させることが、教育の最も根本的な目 的)を日本政府は意識して外してきた。

斯くして日本の教育は教育にあらず、まさに「服従教育」であり、如何に「主権者の自覚を捨てるか」にあるかのような支配が貫かれる。

この教育に打ちひしがれた者の行為が「若者ほど投票率が低い」等に現れ、 他ならぬ投票日に「人を殺せば死刑になれる」という事件が勃発する。


③ 「判断したことを自分で実行する力を持つ」こと:行動で表すことができる こと。


以上の3要素が主権者に求められると考える。

(4)日本統治の基本路線が「反共」であることと、一貫した日本市民に対する「従属教育」が相まって今の政治状況が醸し出される。

自民党の支配は、サンフランシスコ条約(講和条約)以来の反共国会時である。

どちらかといえば、日本共産党を北朝鮮や中国の「共産主義」 を名乗る独裁主義/専制主義と同一視する「共産党は全体主義」といわれれば、「そうだ!」となびいてしまう市民に支えられている。

しかし、自民の国政私物化、資本本位の「劣悪労働条件」「劣悪給与」「自助努力」「絞ればいくらでも出てくる(強烈な大企業内部留保増加と消費税、健保負担率 増加等など)」のデタラメ悪政はなべて市民を苦しめる。

市民のための政治家であろうとする者は、この反共主義の思想をきちんと民主 主義の思想で改善させ、これこそが日本市民を防護し、基本的人権に基づいて社会が構成される道であることを示す必要がある。 「日本市民の思想を民主主義に則ったものに改変する働きかけ」無しに、自民のデタラメ政治をストップさせることはできない。

立憲民主党は「右や左の旦那様」を止めて、政治的にも、民主主義の原理に於い ても、日本市民を根本に於いて正道に導く政治を行って欲しい。

くれぐれも「敗北は左に偏りすぎた結果である」あるいは「執行部の執った野党共闘の道が誤りであった」などという「権力闘争上での見かけの理由」で総括して欲しくない。これぞまさしく自公政治に屈した総括である。

4 東電事故以来の被災者の目―避難者/被災者は棄民された

被曝被害者・避難者としての思いはこの10年強烈であった。

被曝防護と反原発な明確に異なる。 被曝防止を「被曝させない」と公約しているのは「れいわ」のみである。

それ以外は、被曝防護を原発廃棄とは別に掲げているところはない。

きわめて残念である。 健康被害は厚労省データによる解析試算だけでも死亡者の増加や出生者減少など多くの犠牲を出した可能性を示す(矢ヶ﨑克馬『放射線被曝の隠蔽と科学』(緑 風出版)。

10年間の被曝に関する概略を語ると: ⓵放射線被曝被害者、避難者は、日本に市民を被曝から防護する法律があるにも 拘らず、法の適用を受けず棄民された。

すなわち「原子力基本法」以下の法律に於いて年間1ミリシーベルトが一般市民の被曝限度とされている。

ところが日本の法律とは全く関係ない20ミリシーベルトが導入された。

この値は国際原子力ロビーのIAEAが、「永久的に汚染された地域に住民を住み続けさせる」ことを決め(1996年)、ICRPが事故の際の防護レベルとして基準化(2007)したものであるが、日本の法律には導入されていない。

その上、事故に際し、放射性プルームの動向を示す「住民の被爆を防止するため」に作成された「SPEEDI」が公開されず、甲状腺を守る安定ヨウ素剤が、防災訓練 時には配布不可欠とされていながら配布されなかった。 これらの措置の背景には「パニックが起こる」という愚民思想があったとされる。 愚民思想が、現実に物理的に住民をサポートする措置を妨げたという。

加えて、当時官房長官だった枝野氏による「健康被害は直ちには現れません」の 報道を思い出す。

言葉とは別にちゃんと「原子力災害防止特措法」に則って防護をしていれば悪印象を今に至るまで継続するはずがない。

棄民された民は、政治が誠実さを見せるとき初めて、政治を信頼し、政治に未来 を託すことが可能となる。

この誠実さは日本に於いて 得られるだろうか?

住民に対する誠実さが感じられるとき、大挙して「市民連合」「野党共闘」に支持が集まるであろう。 ⓶旧民主党内閣により「子ども被災者支援法」が作られたが、詳細は「基本方針」 の作成によるとされた。

ところが直後に政権についた安倍内閣により換骨奪胎され、ことごとく骨抜き にされた。法に規定された「一定線量」が「相当な線量」に置き換えられ、日本に おける「チェルノブイリ法」は幻に消えた。

自公安倍内閣は、法をねじ曲げ、防護という柱を抜き去った。

そしてきわめて放射線が高い段階で、次々と避難指示を解除した。

オリンピックで「避難者は激減した」数値を示すためだ。 ⓷つなごう命の会は避難者と共に生きようとする団体である。

それを代表する者として、法で約束されたことをきちんと実施し、市民の命と暮らしを守る、「市民目線でちゃんと守る」ことができる政治をつくることを強く望む。

憲法どおりの民主主義を誠実に掲げて史実に実行する政府を臨む。

市民連合が提案して野党4党首が署名した政策を歓迎し野党連合が政権を担うことを期待する。


「れいわ」が掲げる「被曝させない」を共通政策に盛り込むことを望む。 (矢ヶ﨑克馬 2021/11/3)


追伸

今週の土曜日(11月6日)に隈井士門監督による映画3本の上映会があります。

隈井さんは福島より避難して、苦難にめげず創作活動を一貫して続けています。

場所は「ゆかるひ」、前売り券1500円、当日1800円。

10時30分開場、11時上映:一日中連続して3本の映画を連続映写いたします。

連絡先:080-7986-3134

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