第112号原発事故被災者通信 老齢化の進む被爆者に新たな差別を導入するなかれ!
第112号原発事故被災者通信
老齢化の進む被爆者に新たな差別を導入するなかれ!
長崎の特殊に差別され続ける「被爆体験者」に、国は一刻も早く謝罪し、正当に処遇することを求める
各位 お元気でお過ごしですか?
必要とお感じになった場合はどうぞ拡散して下さい。(矢ヶ﨑克馬)
77年前に原爆がヒロシマナガサキに投下されました。
戦後の全ての処置は「放射線被曝」は連鎖反応時に放出された放射線の外部被曝に限定され、放射能の埃を吸い込んだり食べ物と一緒に食べたりする内部被曝は一切無視されました。
アメリカの情報核戦略(知られざる核戦争)に日本政府が追随した結果です。
この「科学的ねつ造」で非常に沢山の被爆被害者が放置されたままになってきました。自己責任では決してない「被曝」により、一生を苛まされ続けてきたのです。
(内部被曝と原爆)
内部被曝被害は半径12~15kmほどの範囲で、水平に広がる放射性原子雲によりもたらされたものです。水平に広がる原子雲は、被爆直後長崎香焼町から撮影されたくっきりと見える円形雲をはじめとして米軍による飛行機からの撮影等の数々の証拠があります。水平に広がる原子雲の範囲は放射能汚染区域です。放射性物質が拡散されている地域ですから内部被曝は全員にもたらされます。
(放射能の電離作用⇒水滴)
放射能は電離作用により放射線の当たった原子の電子を吹き飛ばします。空気中の水分子はイオン化します(電気を帯びる)。水分子は一直線に原子が並んでいないので、その電気力により水分子が次々と結合させられます。
水滴が形成されます。放射性物質の供給さえあれば厚くはない水平に展開する原子雲から降雨がなされます。この場合降雨に上下方向の厚さは必要なくなります。原子雲中心軸から放射性物質の供給さえあれば良いのです。
(原子雲は厚くなくとも雨を降らせる)
これは放射能の無い場合の従来の気象学の常識に反します。原理的に考えられてきた「水滴の形成は水分を含む空気高度の上昇によりの温度が低下し、露点(飽和状態)に達すると水滴を形成する」という原理を満たさなくとも、降雨が生じるものです。
即ち、積乱雲のように上下に厚い雲を形成することなく、水平に広がる原子雲からは雨がもたらされるのです。核分裂連鎖反応が生じた放射能充満空間からの放射能供給がある限り降雨があります。
(広島では降雨域と水平原子雲の範囲が一致する)
広島では実際に降雨が継続的にあり、その範囲が水平に広がる原子雲の範囲と一致することが証明されています(矢ヶ﨑克馬意見書)。
(国策「内部被曝無視」の象徴的被害者が「黒い雨被災者」と「長崎被爆体験者」)
黒い雨被災者には司法により科学的にも人道的にも正当な判断が下されました。
「長崎被爆体験者」は内部被曝により認定被爆地域住民と同レベルの健康被害が記録されていますが、内部被曝を無視する日本政府からは、「あなたたちは被曝しておりません。被曝したのではないかという『精神的ストレス』があなたたちの病気を作り出しているのです」と定義された方々です。添付ファイル「被曝者援護制度上の差別」をご覧ください。
(長崎被爆体験者に対する許されざる国家的差別・偏見)
被爆体験者は爆心地からの半径12km以内の地域に居住した住人です。
この方々は原爆関連で認定されている疾病に懸かったとき。健康手当を受給しようとすると「精神的ストレスによる疾病」であることを証明するために精神神経科あるいは心療内科等の精神関係病院に通院している証明を求められます。率直に表現すると健康被害は精神病なのだというのです。
しかも疾病対象に「がん」が除外されている(精神的ストレスではがんは生じない?)ので、がんが確認されると直ちに健康手当は停止されます。
何という偏見でしょう。国家による77年間続いた差別・偏見です。
(黒い雨訴訟最終判決)
昨年 2021年7月14日、広島高等裁判所に於いて黒い雨訴訟に対する判決がありました。これはこの訴訟に対する最終判決となりました。
判決の内容は
① 内部被曝を認め,
② 黒い雨に遭ったか遭わなかったかによるのではなく、黒い雨降雨域に所在していたと認められる者については、内部被曝をしたと認定する。
③ 原爆に関わる指定疾病に罹患することを要件とせず,被爆者援護法1条3号の「被爆者」と認める。
という判決でした。
(厚労省による法治国家の規律破壊)
しかし、厚労省は判決後の判決を受け入れる厚労省指針として、被爆者認 定対象者を
① 実際に黒い雨に打たれた人、
② 指定疾病に罹患した人
に限定しました。厚労省の「指針」は判決の科学性や人道性を破壊するものです。
最終判決の趣旨を大きく逸脱し,判決により否定された従来の被爆者認定の枠組みの中で対処するという「判決に従わない」姿勢でした。
(日本は法治国家ではないのか)
これは法治国家として大問題です。
例えば、原発稼働を差し止める判決が出たとすると,実際に稼働することは許されません。三権分立は法治国家の厳しい枠組みですが、その法治国家のあるべき対応を無視しているのです。戦後76年目にして新たな差別が持ち込まれました。
(被爆体験者訴訟は不当判決の連続:二回目訴訟団が不屈にも立ち上がっている)
被爆体験者訴訟は2003年に提訴され、第一陣と第二陣に分かれて合計650名の原告が立ち上がりました。それぞれ最高裁までの3回の判決が下されましたが、内部被曝は認めず、水平原子雲も認めず、ミスター100ミリシーベルトなどと呼ばれた山下俊一氏等を中心に主張された世界に類例を見ない「100ミリシーベルト以下の被曝による健康被害は臨床的には認められていない」論を基盤にして不当判決が構成されていました。
(体制を批判する科学者にレッテル張りを)
特に第1陣高裁判決では、他ならぬ判決文に「矢ヶ崎意見の基調をなすのは,徹底した反ICRPの姿勢である」と述べられています。私の弁はICRP体系の科学的であるべきバックグラウンドが科学の体を成していないことを論じ、それに依拠した「判定」は科学的基礎が無いことを論じています。現状の「科学的」に見せようとしている体系の骨格は、「この様に信じなさい」というICRPの支配徹底を計っている「戒律」にすぎないことを論じました。これらの論旨は『放射線被曝の隠蔽と科学』(緑風出版、2021)に提示してあります。
(原子力ムラを批判する者への対応方法)
長崎被爆体験者訴訟で見られた特徴は、法廷に提出された弁論を巡って、裁判官がレッテルを貼り、論じられている科学的内容の検討を拒否するものでした。私は、司法は人道に立ち、「真実が何であったか」を究明することによって判決の正当性を担保するものである」と主張します。
被告(国と長崎市等)と裁判所は、真理を担っているとは限らない多数派の論に依拠して、それを批判する論者にレッテルを貼り、真理の探究を妨げる精神を示しているのでした。私は判決を厳しく批判いたしました。
(原子力ムラの主張する100ミリシーベルト以下安全論を巡って)
東電原発事故後に大キャンペーンされた「100ミリシーベルト以下は安全」論は、今は多方面から厳しく批判されていますが、長崎被爆体験者訴訟にはもろに不当判決の論拠になる障壁となって立ちはだかりました。
私は特に「100ミリシーベルト以下は安全」論の根拠を与えている山下グループの実験的研究に対して誤りであることを論じた意見書を提出しています。
「安全とされた被曝線量は100ミリシーベルトではなくおよそ0.7ミリシーベルトであり」、「与えられた打撃が修復できなかった線量は250ミリシーベルトでは無く、1.7ミリシーベルトである」という計算結果を示しました。山下グループは、1.7ミリシーベルでは放射線の与えた電離が修復されずに障害として残るという事実を、「100ミリシーベルトは安全。250ミリシーベルトでやっと修復されない打撃が残る」と主張し、100ミリシーベルト以下は安全論に結びつけるのでした私はこの虚偽を暴いています。
国側がこれに反論しましたが、私の提起した論理を全く理解する能力を持たず、形式論につきる、あるいは矢ヶ﨑が多数の科学者の同意を得ていない等と難癖を付けることに終止し、まともな論戦が行われませんでした。
(微小領域(表面薄膜中)で生じる電子生成とエネルギーの生成の物理プロセスを追った解析)
そこで私は根拠になる物理的プロセスを逐一追っての考察を具体的に展開して100ミリシーベルト論を徹底的に批判しました。
その際既に提出していた被告国側論者に理解能力が無く理解してもらえなかった少し抽象的な論を新しい具体論に差し替えました。
(国側の卑劣な論理)
ところが、国側は新しく具体的に論じられた矢ヶ﨑の論理を確かめ、科学上の論戦を交わすことが求められるところ、「矢ヶ﨑は提出した意見書の約10ページにわたって削除しており、矢ケ崎氏の意見は、少なくとも科学的な検証に耐えられるような手段と過程で十分に検討されたものではないことは明らか」等と、差し替えるという行為を難じているのです。
具体的に100ミリシーベルトの不当性を論じた矢ヶ﨑論を「科学的に批判する」ことの代わりに、差し替えたことに難癖を付けたのです(差し替えざるを得なかったことは上記しました)。
難癖を付けることにより具体的に論じている内容を封じ込め、論戦に負けることを避けているのです。彼らの卑劣な手法がよく分かります。
すこし専門的になりますが矢ヶ﨑論を添付ファイルで紹介いたします。山下グループの過誤である調査結果論文も示します。
どうか「長崎被爆体験者」の歴史的苦難をご認識下さい。
裁判の苦難もご認識下さい。
高齢化を押して、一生を虚偽の「内部被曝否定」により苛まれ続け、しかし使命感と勇気を持って立ち上がっている被爆体験者にご支援下さい。
長崎被爆体験者訴訟に対する激励やご支援は
諫早総合法律事務所
〒854-0062 長崎県諫早市小船越町617番地11.
電 話, 0957-24-1187
FAX, 0957-24-5257.
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